第8章 免罪体質
こうして僕は、自らの体質を利用して"犯罪者"になった……。
他人を犯罪者に仕立てあげ、その様子を傍観する。
そう、まるで劇でも見るかのように……。
あらゆる人々の作り出す犯罪劇は、見ているだけで中々楽しめた。
面白いものだった……。
……もし、そんな僕を止めることが出来る人間がいるとしたら……。
それは僕を殺すことが出来る人間だ。
人を殺す勇気のある……そんな人間だ……。
だから、悠…僕を殺してみせて?
止めたいのなら……。
早くしないと……取り返しのつかない、大変なことになっちゃうよ……?
僕はそっと瞼を閉じ、そこに焼き付いたように離れない…愛らしい彼女の、悲しそうな…憂いを帯びたあの表情を思い出す……。
…昔は、あんな顔……。
させたりはしなかったのに……。
どんなに君を困らせても、あんなに悲しそうな君の顔は見たことがなかった……。
どんなに君を困らせても、あんなに辛そうな顔をさせたことは無かったのに……。
どうしてだろうか……。
少し、胸が傷んだ。
切なくなった……。
……これが、"恋心"というものなのだろうか……。
君の悲しむ顔はもう見たくは無かった……。
だが、もう後戻りは出来ない。
だから、もう彼女に会わないことを願った……。
……それでも…心のどこかで、再び彼女に出会いたいと思いつつ、そっと閉じていた瞼を押し開ける。
僕は、そっとそんな心中の矛盾を嘲笑した。
今更だとは思うが、やはり彼女を愛していたのだ……。
少し迷いはあるが…これ以上止まることは出来ない。
そんな事を考えつつ、読んでいたはずの本の開かれたページを閉じた。