第7章 過去
「今時、ハイパーオーツのくっそ不味いやつばっかりだけど、やっぱり"本物"は美味しいよ〜♪」
『へぇ…。そうなんだぁ……。』
得意そうに言う相手に相槌を返しつつ考える。
…少しは聞いたことがある。
今や日本の食料自給率はほぼ100%まで上昇し、その"ハイパーオーツ"と呼ばれる小麦で全て賄われている。
昔……。
まだ、"ハイパーオーツ"が無かった時代の日本の食料自給率はかなり低く、外国からの輸入にほぼ頼っていた物もあるらしいから驚きだ……。
「ちょっとちょっと〜。もーちょっと驚いてくれても良いんじゃない?」
思考の世界から、その不服そうな声で呼び戻される。
いつの間にか下がっていた視線を上げると、縢くんが不満そうにじとっと私を見つめる。
『ごめんごめん。…驚いた、と言うよりは感心した、かな。今度詳しく調べてみるよ。』
「へぇ〜。さっすが悠ちゃん♪はい。そうこうしてる間に完成☆」
苦笑して言うと、縢くんの料理も出来上がる。
ほかほかと湯気を立てる料理が皿に盛り付けられた。
私は、その美味しそうな匂いを肺いっぱいに吸い込む。