第6章 白い人
彼女は、ある本を探していたようだ……。
ーウィリアム=シェークスピア著 ハムレット[Hamlet]ー
シェークスピアの四大悲劇の一つ。
1601年頃作。
デンマークの王子ハムレットは父王を毒殺した叔父と不倫の母への復讐を父の亡霊に誓うが、思索的な性格のため悩み、恋人オフィーリアを棄て、苦悩の末に復讐を遂げて死ぬ。
そんな作品だ。
中学生の少女が読むような作品ではない。
この本は、何故か電子書籍になっていない。
かと言って紙の本を探すのも一苦労だ……。
ここには様々な紙の本がある。
……見つかって良かった。
……ハムレットも…君も……。
本を取って渡すと、少女は嬉しそうに微笑った。
…その愛らしい笑顔に、心臓がとくんと脈打つ……。
「君の可愛らしい唇で、"聖護先輩"とは呼んでくれないの?」
少しからかうと、彼女は頬を真っ赤に染め焦り出す。
その様子はとても可愛らしい。
気づいた時にはもう彼女に夢中になっていた……。
"ご褒美"と称した彼女の耳への口づけ……。
僕は彼女を抱きしめようとして他の人に見られてはまずいと思い、彼女の頭へ手を持っていく……。
最後に…
「…明日も、来てね?待ってるよ……。」
出て行こうと扉の前に立った彼女に微笑みながら言うと、彼女は小さく
『は、はい……。』
とだけ返事をして、足早に去っていった……。
僕は、瞼に焼き付けた彼女の笑顔に想いを馳せるのであった……。