第6章 白い人
Side of 槙島
いつもの様に図書室を訪れると、いつもの紙の香りのみで満たされた…人気の無い様子とは異なり、扉が少し開いていた。
微かに残る柔らかく甘ったるい…馨しい香り……。
そして、踏み台がいつもの場所になかった……。
室内を歩き回ってみる…と、ある棚で踏み台に乗り、本に手を伸ばしている人影を見つけた。
幼さの中にも美しさがあるその少女は、目いっぱい腕を伸ばす。
だが、あと少しというところで彼女の手は本には届かないのであった……。
僕は苦笑し、それから彼女へと歩みを進める。
だが、彼女は気づいていないようだ。
…と、その時。
ぐらりと台が揺れ、少女は倒れていく……。
「っ…!!危ない…!!」
僕は反射的に彼女を抱きとめた。
その時、この部屋に入った時と同じ…。
柔らかく、華やかで優しい香りが鼻孔をくすぐる。
僕の腕の中に居るのは、おそらくこの中学校の生徒だろう。
彼女は閉じていた瞼をゆっくり押し上げる。
淡い色の澄んだ空の様な瞳は、とても美しかった……。
ツーテンポほど置いてから、彼女は驚いたように
『ま、槙島先生っ!?💦』
と言った。