第6章 白い人
言われてフラッシュバック。
私の顔の熱は急上昇。
「……やっぱり、可愛いね。…嫌だったら、ごめんね?」
静寂を乱す先輩の声。
先輩は私を抱きしめよう腕を伸ばし、ふと止まる。
そして、そっと私の頭を優しく撫でた。
『…嫌じゃ…ないです……。』
私はその瞬間。
幼いながらに私は先輩に恋心を抱いたのだった…。
校内でもかっこよくて美形な先輩は、生徒からもそして他の先生からも人気があった。
……どうして?
どうして私の耳にキスを……?
耳へのキスは…誘惑。
こんな事を考える私がおかしいのだろうか。
胸中の複雑な感情を先輩に訊ねようにも、真っ白でちょっぴり意地悪な小悪魔の先輩はクスクスと悪戯じみた笑みを浮かべるだけだった……。
「明日も来てね?…待ってるよ。」
そろそろ昼休みが終わってしまう…。
そう思い、出入り口の扉の前に立ったその時、彼がそっと私に言った。
『は、はい…。』
断りきれずに、私はそれだけ答えて足早にその場を後にした……。