第6章 白い人
「まぁ、僕はたいていここにいるから。…また本が取れなかったら僕に言って?……取ってあげるから。君も、シェイクスピア好きなの?」
『ありがとうございます。はい…好きです。』
先生と共通の趣味が見つかって嬉しくて私は微笑んだ。
「……一緒だね。僕もシェイクスピアは好きだよ。それと、その"槙島先生"っていうの、やめて?堅苦しいし、あまり好きじゃないんだ。」
『え…で、でも……。』
戸惑う私を見てクスリ、と笑う先生はこう続けた……。
「君のその可愛らしい唇で"聖護先輩"とは呼んでくれないのかな?」
先生は、からかう様に私に近寄り
そのままそっと焦らすように私の唇を撫でる……。
『っ……!?せんせ……。』
「ほら……言ってごらん?」
硬直する私に、幼い子供を諭すような口調で彼は言った……。
『聖…護……先輩…?』
緊張しながらも私は小さな声でそう呼ぶ。
「あ、惜しいことをした。"聖護"でも良いよ?」
『え!?💦』
「……まぁ、言えたからご褒美ね……。」
クスリと小さな微笑を残して、先輩は私にさらに近寄る。
私の耳にふっと息がかかったかと思うと、先輩の熱を帯びた唇が触れる。
私は、硬直したままだった。
先輩の顔が離れていく。
微笑んでいた先輩だったが、私の顔を見て"あ……。"と声を漏らした。
「もしかして、唇の方が良かったのかな?自重したつもりだったんだけど…。」