第2章 パラライザー
数百メートル進んだ所で、遠くにうずくまっている監視官を見つけた。
「如月監視官……!!」
駆け寄ると、すぐ側に被害者の死体が無造作に転がっていた。
その姿は俺でも目を逸らすほど哀れだった。
つい、数ヶ月前まで、ただの"善良な市民"であった如月監視官にはそこれ以上にないほどのショックだっただろう。
そう思い、俺はとりあえず監視官を抱きしめて宥めた。
ふと、監視官が顔を上げた。
「……監視官…?」
大丈夫か?…その言葉は彼女の表情を見て引っ込んだ。
『……すみません。取り乱してしまいました。……もう、大丈夫です。』
涙目で…ただ真っすぐに俺を見つめそう言う彼女を、俺は気に入ったようだ。
「……その様だな。…とりあえず、ドローンに死体の処理をさせておいた方が良いと思うんだが…。」
「……はい。」
ドローンに操作をした後、こちらに向き直る監視官。
「……どうした?」
『……。』
「…監視官?」
監視官は重々しく口を開いた。
『ご迷惑をおかけしました……。』
申し訳なさそうに、深く一礼する如月監視官。
「……。」
『……。』
「……。」
『……?』
「…ふふっ。はははっ!!」
『!?……え?』
思わず、笑ってしまった。
属に言う、"大笑い"と言う奴だろう。
久しぶりにこんなに笑った。そう思えるくらいの大きいやつだ。
『えっと…何かおかしい事、ありましたか?』
「いや、別に…。」
俺は…笑いが治まらないまま、しばらくの間悶絶していた。
『わ、笑わないでくださいよ~っ!?💦』
「すまない。
別に馬鹿にしている訳ではないから、許してくれ監視官殿。」
クスクスと尚も笑い続ける俺を見て、監視官は頬を膨らませた。
予想外の反応に不意打ちをくらい、心臓がトクンと脈打った。