第4章 裁けぬ人
「そうだ。それで良い。…それで僕を打つんだ。」
『そんな事、出来ないよ……。』
「君は、優しすぎるんだ。……でもね、僕は思うんだ。僕を止められる事が出来る人間がいるとしたら、それは、僕を殺す事が出来る人だ……。だからね、悠。さぁ、打つんだ……。」
彼は懐から折りたたみ式のナイフを取り出して…女性の背中の切り付けた。
「いやぁあああああああっ!!」
女性の悲鳴。
ドミネーターは相変わらず……
= 犯罪係数 アンダー30 執行対象ではありません。 トリガーをロックします。 =
私は、震える手で銃を構えた……。
「…そう。それで良いんだよ。ちゃんと僕の頭部を狙うんだ。眉間を……ね。」
彼を、殺してしまいたくない。
でも、殺さなければ女性は殺されてしまう…。
私はドミネーターも持ち直す。
左手にドミネーター、右手に銃……。
ずしっとした、ドミネーターよりも重い……無機物の重み…。
私は引き金に指をかけた。
彼は、私を何も出来ない子供かのように、優しく微笑みながら見つめていた……。
ドクドクと嫌に脈打つ心臓が五月蝿い。
私は息を呑んだ。