第4章 裁けぬ人
……そうしていると、
「いやっ!!離してっ!!」
女の声が聞こえた。
それを遮るように、男の声が響く……。
「……狡噛慎也…。君は僕を楽しませてくれそうだ。だが、今の君では無理そうだね……。」
小さな薄笑いを残して、男は俺に背を向けた。
「いやっ!!離して…!!助けて!!執行官さん!!」
「くそっ……!!」
女の叫び。
朦朧とする意識の中で、霞む視界に男の背と連れていかれる女が見えた。
何とか…しなければ……。
意思に反し、身体はもう動きそうにない……。
…するとそこへ、
『狡噛さん…!!』
「コウちゃん……!!」
「監視官…縢……。」
『酷い怪我…。ど、どうしたら…。』
「弾丸は貫通してる。応急処置くらいなら、俺出来るよ。」
「俺は…良いから……。早く、奴を追え……。」
「コウちゃん?男は死体で見つかったよ?被害者はまだだけど……。」
「その、被害者が…別の男に連れていか…」
「ちょ、も、もう良いから💦」
『…縢君。応急処置をお願い。私が追うよ。』
「え…危ないよ!?💦」
『こう見えても、私首席だったんだよ?』
「で、でも……。」
『……お願いね。』
足音が遠退いて行く…。
監視官だけでは、危ない。
俺は動きそうになかった身体を叱咤し、起き上がろうとすると、
「コウちゃん!?だ、ダメだって💦」
と、縢に止められた…。