第4章 裁けぬ人
Side of 狡噛
「……くそ…。」
逃げながら銃に打たれ、負傷している俺は、ふと女を見た。
……ふと感じた違和感…。
女も背中に違和感を覚えているようで、背中を庇うようにして行動していた…。
「おい。背中見せてみろ。」
「え……。」
女は俺に背を向ける。
「上着、脱いでみろ。」
女は言った通りに上着を脱いだ。
「……背中に何かついてるな…。」
俺はそれを確かめ、女の背についていた物を外した。
「何…これ……。いつこんなものがついたんだろ…?」
少し正気を取り戻した女はまじまじとそれを見つめた。
「貸してみろ…。」
俺は女からそれを受け取り確かめる…。
「これは……。」
「え…。何々?何なの…?」
その物体は棒状で…まるで旧式の通信機のアンテナに見えた。
そういえば……。
と、記憶を手繰り寄せてみれば、先ほどの犬型のロボットの背にも
何か、箱のような物がついていた…。
よく、あの状況下で覚えていたものだ、と感心した。
人間の脳の記憶力とは、恐ろしいものだ。
そんな事を考えていると、不安で堪らなくなったのか、女が再び声を上げた。
「…ねぇってば、何なの?」
「…たぶん、通信機か何かのアンテナ、だろう。……少し古いものだが、俺に使えないわけじゃない。」
「じ、じゃあ。助かるの!?」
女は声を上げる。
「残念だが、これはまだ使えない。バッテリーと本体が必要だ。」
「……そんな…。」
「だが、希望は見えてきた。」
「私達……助かるの?」
「恐らくは、な。」
「よ、良かったぁ……。」
「少しの間、ここでじっとしていろ。……すぐに戻る。」
女にそれだけを告げ、俺はその場を離れた……