第4章 裁けぬ人
トレーニングルームのドアが開くと、室内からバシン、バシン、と、激しい…ぶつかり合いのような音が聞こえた。
中を覗いてみると、狡噛さんが天井から吊された……丸太?のような物に拳を叩きつけていた。
しばらくその様子を見ていたのだが、狡噛さんがこちらに気づいてトレーニングを止めたので、私も彼に近寄った…。
『狡噛さん。また、トレーニング用のロボット壊しましたね?』
「……ばれてたか。」
『もー。"ばれてたか。"じゃないですよ…。また管財課の皆さんに迷惑かけて、怒られちゃいましたよ?……宜野座さんもとっても怒ってました…。』
少しむくれて言うと、狡噛さんは悪びれもせずに言う。
「だったら、もう少し強い奴を連れて来い、と管財課に言っておいてくれ。」
『そういうわけにはいきませんよ……。』
困り果ててそう言うと、狡噛さんはまるで自嘲するかのように薄く笑った。
「俺は…。やらなきゃいけない事があるんだ……。」
重々しくそう告げる狡噛さん。
その言葉の本当の意味を、この時の私は理解しきれていなかった、ということを後で痛いほど知ることになる……。