第12章 死
槙島に見つめられ、私は上手く呼吸が出来ずにいた……。
呼吸が浅く、喘ぐ。
…苦しい。
……彼に、全てを見透かされているような…そんな気がした……。
「黙れ。これ以上如月に何か言ったらただじゃ済まさないぞ…。
槙島聖護……っ!!」
「狡噛慎也。…君ってどうしてそういう、色相濁らせるような考え方しか出来ないのかな……。」
張り詰めた空気……。
槙島聖護を追い詰める狡噛さん…。
と、私……。
……槙島は、徐々に後退していく…。
ダメ。
待って…。
それ以上は、行っちゃダメ……っ!!
……彼の背後には、高くそびえる崖が切り立っている…。
落ちれば、即死してしまうほどの高い崖が…。
彼は、そのことを…その存在を……わかっているのだろうか……?
ーミシ……ー
彼の足元の岩壁が嫌な音を立てる。
槙島が眉根を寄せ、顔を顰めた。
……次の瞬間…。
ーガラ……ガラガラッ……!!ー
「っ……!?」
槙島の足元の地面が…岩が……。
音を立てて崩れていく……。
槙島は驚いたような表情をしているが、それに…その運命に抗おうとしていない。
『槙島聖護……っ!!』
「っ……!?」
槙島が崖下に姿を消していく……。
私は駆け出していた。
驚いた狡噛さんは動けずにいるようで、その場から動こうとしない。
槙島聖護が、崖下に呑まれていく……。
"…言ったはずよ……?"