第12章 死
視界が開けた時……。
少し先に白い人の背中があった。
…その人が、私の気配に気づきゆっくりと振り返る。
『槙、島…聖護……。』
そう呼ぶ私に、彼はふわりと微笑んだ。
「……悠。久しぶり…。
…って言っても、たった数ヶ月ぶりなんだけどね……。」
『……何故…。
どうして、逃げたりなんか……。』
「……まぁ、いろいろあって…ね……。」
『……。』
なんともないような風に、ふっと微笑んで言う槙島。
言葉につまって俯いた私に、そっと近づいてくる足音……。
「そんな風に、悲しい顔…しないで……?」
そっと私の頬を撫でる、かつて私自身が愛した人の掌……。
…それは、あまりに温かくて、優しすぎて……。
私の視界が歪んでいく…。
彼は、溢れた涙が頬を濡らし伝っていくのを見て、少しだけ悲しそうな顔をした。
頬を濡らすその涙を…そっと指で優しく拭った。
「泣かないで、悠…。
…僕は、君を愛しているよ。
……君が望んでくれるのなら、このまま2人で何処へだって行けるよ……。」
『…それは、出来ないの……。』