第11章 逃走
「…如月。あんたが好きだ…。
いつの間にか、あんたに惹かれてた…。
答えは要らない。言いたかっただけだ。
嫌だったのなら忘れてくれても構わ…」
狡噛さんが言い終える前に、私は彼の手を取り、上体を起こす。
『わ、私も…。狡噛さんが好きです……っ!!』
……私も、いつの間にか狡噛さんに惹かれていた…。
今、狡噛さんの告白を聞いて、おぼろげだった想いがはっきりとしたものになった。
…私も……。
『私も……狡噛さんが好きなんです…。』
言ってから我に返る。
…私は、何ということを口走ってしまったのだろうか…。
狡噛さんは、というと……。
驚いたように目を丸くしていたが、ふっと微笑んで言った。
「全く……。
あんたには、本当に敵わないな…。
今までも、きっと…これからも……。」
それから、困ったように微笑んで狡噛さんは私の頬を撫でた。
触れられた部分が、甘く熱を帯びる…。
それから…
狡噛さんの顔がゆっくりと近づいてくる……。
私は、そっと瞳を閉じた…。
私と、狡噛さんの唇が…淡く甘く触れ合い、重なり合った……。
その時の私の胸中は、幸せで満たされたのだった…。