第11章 逃走
『……。』
「……。」
『あ、あの…。』
非常に気まずいので、私は声をあげる。
…すると、狡噛さんが笑いだした。
『…狡噛さん……?』
「あいつは、ああやってすぐに人をからかう。
…そうやっていちいち動揺してたら身が持たない上に、良い鴨にされるぞ……?」
珍しく声を出して笑う狡噛さんにつられて、私も笑ってしまう。
『…もう、されちゃってるかもしれませんね……。』
「……違いない。」
お互いに顔を見合わせてクスリと笑いあった。
「……ところで、如月。」
しばらく笑ったところで、狡噛さんが声をあげた。
その顔からは既に笑みは消え、真剣な眼差しをこちらに向けている。
真剣な眼差しで、私を見据えている…。
私を、捉えて離そうとしない。
私も目を離すことが、逸らすことが出来なかった……。
『な、何でしょうか…?』
思わず声が上ずってしまった。
だが、狡噛さんはそんなことを気にとめた風でもなく続ける。
「縢から聞いたんだが……。
…縢の気持ち、本人から聞いたんだって……?」
『……はい。
聞きました…。』
…一体、狡噛さんは縢くんにどんな風に聞いたんだろう…。
それが少しだけ気になった。
「それで…。その……。
俺も、言うだけ言おうと思ってな……。」
そこで言葉を切ってから狡噛さんは近くの椅子に腰掛けた。