第11章 逃走
『は、はい。
頑張ります……。』
少し緊張しながら言うと、それを見透かされたのか宜野座さんがふっと小さく笑った。
「では、俺は仕事に戻る。」
私に背を向けて歩いていく宜野座さん。
…それに続いて征陸さん、六合塚さんが歩いていく。
「ギノさーん。やっぱり悠ちゃんに甘いっすよね?
…好きなんすか〜?」
縢くんがたっと駆け出し宜野座さんに肩を並べ、からかうようにそう言った。
「ば…っ!?
か、からかうな‼縢……っ!!
黙らないか…っ!!」
「あれ、図星っすか?」
「黙れと言っているのが聞こえないのか……?」
からかうようにケラケラと笑う縢くんに眉根を寄せ不機嫌そうな宜野座さんが言った。
楽しげな、いつも通りの1係の雰囲気が聞こえ、私は微笑んだ。
皆の声が遠のいて、完全に聞こえなくなってから唐之杜さんが声をあげる。
「じゃあ、あたしもそろそろ仕事に戻るわね。
……悠ちゃん。慎也くんに襲われそうになったら遠慮なく言ってちょうだい。
じっくり観察させてもらうから。」
唐之杜さん……。
語尾にハートが付きそうな感じで……今、すごいこと言った……っ!!
え、ええ!?
ど、どどど、どう返したらいいの……っ!?
そんな動揺する私を気にする風でもなく、
「じゃあね〜。
ごゆっくり〜。」
と、唐之杜さんは鼻歌混じりに出ていってしまった。