第10章 決着
「っ……。
槙島聖護……っ!!」
今まで黙っていた縢くんが、しびれを切らしたように叫ぶ。
その声は少し苛立っているようにも聞こえた……。
だけれども、彼を見てみると、その表情は真剣そのものだった。
縢くんは彼の視線が自分へと向いたのを認めるや否や、言葉を続けた…。
「あんたが…。悠ちゃんを大切に思ってるってのは知ってる。
悔しいけど、すんげぇ伝わってくる……。
だけどな、悠ちゃんとお前とじゃ…生きてる世界が違ぇんだよっ!!
2度とっ!!俺達の悠ちゃんに近づくんじゃねぇ……っ!!」
最後の方は感情的にでもなってしまったのだろうか。
声を荒らげる縢くん。
肩で息をしている。それほど、私を想っていてくれたのだろうか……?
……本当に、私は幸せで愚かだ…。
『縢くん……。』
「俺、だって……‼悠ちゃんが好きだ……。
だけど、俺……潜在犯だから……。汚れきってるから……っ!!」
「落ち着くんだ、縢。」
「だって……っ!!」
尚も声を荒らげそうになる縢くんを狡噛さんが宥めようとする。
……私の所為で苦しんでいるのなら……。
尚更私だって、放っておくことなんか出来ない。
槙島先輩の傍を離れ、縢くんの元へ行こうとする。
……一瞬だけ、槙島先輩の腕に力がこもったような気がしたが、それも最初から無かったかのようにすぐに消えた。
……いや、もしかしたら本当に勘違いなのかもしれなかった……。