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PSYCHO-PASS ー真っ直ぐな瞳ー

第10章 決着




「……悠…。」


私に向き直った槙島先輩が、ふいに私の頬を掌でそっと撫でた…。
その触れ方には、以前同様。
優しさや、彼自身の"何か"に対する意思の強さがあった。


『槙島…先輩……?』


「泣かないで、欲しかったのに……。
 また、泣かせてしまったね…。」

『っ……‼』


ふっと困ったように笑って言う先輩。

その瞬間、私の頬に熱いものが伝い落ちる。
それは、いっぱいいっぱいになってしまって溢れてしまった私の心……。

先輩は、優しく…本当に、優しく……。
まるで宝物でも扱うかのような仕草でそれを拭った。

そういう行為が、余計に。
悲しくて、苦しくて…切なかった……。


『お、願いです。槙島先輩…。
 …これ以上、罪になるようなことをしないでください……。』

「……。」


私の言葉を、ただただ穏やかに微笑みながら聞く槙島先輩…。
そこへ狡噛さんの声が届く。


「槙島聖護…‼
 如月から、離れ……っ!!」


途中まで紡がれたその言葉は槙島先輩の声で遮られてしまった。


「近づいたのは、僕じゃない。悠自身だ。
 仮にそうだったとしても、君には関係の無いことだ。」


涙が止まらなくなってしゃくりあげる私を、そっと抱きしめた槙島先輩。
その手は、とても…優しくて温かかった……。

狡噛さんとの会話の声は鋭いのに、その手は、ひどく優しかった…。
私は、その優しい手にすがりついて泣いた。
その優しさが、私を余計に苦しめた……。


「…悠。ごめんね。」


そっと耳元で囁かれた穏やかな声が……。
更に余計に私の心を締めつけ、軋ませた……。

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