第10章 決着
『っ!?
な…か、縢くんっ!?』
顔を真っ赤にして言う悠ちゃん。
…俺が、ファーストキスの相手だったら良いのにな、なんてしょーもない願望を抱きつつ、俺は言葉を続けた。
「悠ちゃん。
……好きだよ。
すっげぇ、好き……。
……でも、ダメだってわかってるから、返事だけは言わないで…。
ただの一方的な俺の思いだから。……キス、しちゃってごめん。」
最後の方は後悔からか、ボソボソと声が小さくなってしまった。
情けないが、悠ちゃんの顔を見ることができない。
そのまま俯いていると、今度は悠ちゃんの方から俺を抱きしめてくれた。
『……ありがとね。
すごく、嬉しい。
……返事はできないけれど、これから先…ずっと……。
…死ぬまで、その言葉大切にする。』
ひどく優しく、温かい声で…そんなこと言われたら……。
俺はどうすりゃ良いんだよ……。
俺にはそんな優しい言葉が、甘く聞こえてしまった……。
「…これ以上……俺を好きにならせないでよ……。
溺愛しちゃうじゃん。
悠ちゃん以外、何も見えなくなっちゃう。」
小さく溜息を吐いて苦笑しつつ、俺は俺を強く、そして優しく抱きしめる悠ちゃんを抱きしめ返した……。
……神様。神様。
この世界にいるのなら、今この瞬間だけで良いから、時の流れを止めてください。
悠ちゃんが、悠ちゃんの心が欲しいとは言わない。
こんなクズでも、望むことが許されるのなら……。
……この瞬間をもう少し…………。