第2章 パラライザー
Side of 縢
「……。」
『~で~です。~。はい…。』
報告をしている悠ちゃんをちらっと横目で見て、俺は考えた。
俺は"猟犬"でしかない。
"猟犬"だから、シビュラの……ドミネーターの命令通りに人を打ってきた…。
……今までの判断は間違っていたのか?
悠ちゃんを見ていると、そんな不安に駆られる。
「縢…どうした?」
そんな風にいろいろ考え込んでいると、コウちゃんが後ろからポンッと背中を軽く叩きながら話しかけてきた。
「あ、コウちゃん…。」
「なんだ?」
「……さっきの俺の判断って、間違ってたのかな?って、ふと思っちゃってさ……。」
「……。縢、お前がそれが正しいと…間違っていない。そう思えるのならば、それは間違いじゃないさ。ただ…。」
そこでコウちゃんが少し考え込む様な素振りを見せる。
「……ただ?」
俺はコウちゃんの言葉を待ちきれず、聞き返した。
「ただ…如月監視官は、まっすぐ過ぎるんだ……。」
「……そっか…。」
悠ちゃんの…まっすぐな瞳だ…。
俺が見てたのは、俺が…ビビってるのは…。
あまりにもまっすぐ過ぎる……悠ちゃんの瞳だ。悠ちゃんの意思だ。
それに気づいた時、俺はどうしようもなく悠ちゃんから目を離せなくなってしまっていた。
怖いけど、目を離すのは惜しまれる…。そんな感じだ。
胸の中に出来た、この妙な蟠りを……俺はまだ理解出来ていなかった……。