第9章 暴徒
拘束を進めていると、人気のない…暗い路地に人影を見た気がして、私は目を凝らした……。
もしかしたら、逃げた人がいるのかもしれない……。
そうだとしたら、追って拘束しなければならない。
『……あ…。』
槙島聖護だった……。
彼は路地を颯爽と歩いていく…。
路地の奥へ…暗闇へと消えていく……。
『狡噛さん、縢くんっ!!
ここをお願いしますっ!!』
狡噛さんに気づかせてはいけない……。
そう思った私は気がつくと路地に駆け込んでいた…。
「如月っ!?」
「悠ちゃん!?
ちょ、何処行くの…っ!?」
『すぐに、戻ります‼
拘束が終わったら必ずここで待っていてください……‼
か、監視官命令ですよっ!!』
走り去りながら、戸惑ったような2人の声を背中に浴びながら、私はそんな言葉を返した……。
私は先を急いだ…。
……彼の姿を、見失ってはいけない…。
薄暗い路地に走り込んだ時……。
視界の隅に、白いものを掠めた気がした。
項に鈍い痛みが走り、視界が霞んだ……。
『っ……‼』
「……いけない子だね。
こんな所に、1人で来るなんて……。」
薄れゆく意識の中、そんな声を聞いた……。
それは、間違いなく…槙島聖護の声だった……。