第9章 暴徒
私は言葉に詰まり、硬直する……。
…もし、そんなことがあったとしたら……。
ヘルメットが大量生産され、ばらまかれているとしたら……。
取り返しのつかないことになってしまう…‼
「……どうする。如月。」
「…悠ちゃん……。」
『っ……。
一旦、宜野座監視官に報告します。
……それから、局長にも……。』
言葉を詰まらせながら、2人にそう答えた。
いろんなことがありすぎて、頭がいっぱいいっぱいだ。
整理出来ない。…頭が追いつかない……。
私は、無力感に打ちひしがれて俯いた……。
ぐっと拳を握る。…その手がどうしても震えてしまうのは、怒りからだろうか…?……それとも…………。
そんなことを考えていると、縢くんが口を開いた。
「報告したところで、現状は変わらないよ?
……それでも、良いの?」
そっと顔を上げ、縢くんを見つめる。
その瞳は、真っ直ぐに私を捉えて離そうとしなかった。
……縢くん、本気なんだ…。
強い意思を秘めた瞳が私をずっと見つめている。
試されている……。
そんな気がしてしまった……。
『……例え、そうだとしても、私には今出来ることをやるしかない…。』
私のその声を聞いて、縢くんが顔を綻ばせた。
唐之杜さんも納得したように何度も頷いている。
「…さっすが‼
それでこそ、俺達の悠ちゃん‼」
「……それでいいさ、如月。
その積み重ねが、いつか奴に…槙島聖護にもたどり着く。」
私の頭に狡噛さんの手が乗せられる。
大きなその掌は、私の頭をぽんぽんと優しく撫でて離れていった……。
……槙島聖護。
私は必ず、貴方を捕まえます……。
何があっても、絶対に……‼
私は、自らの思いを固く胸に刻み、2人と共にその場を後にした。