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Welcome to our party 2 【気象系BL】

第96章 第三ボタン by Namako


無事式が終わり、校庭で花道を作る中、俺は一人体育館にいた。

もう今までみたいに先輩の背中を見ることも出来なくなると思ったら、情けないけど、やっぱり先輩を笑顔で見送る勇気が、俺にはなかった。

「はあ…」

深い溜息を一つ落とした時だった。
キュッと、ゴムが床を滑るような音がして、俺は顔を上げた。

「えっ、なんで…?」
「いやさ、お前の姿見えなかったからさ…。あ、そうそう、格好良かったぜ、お前の送辞。やっぱお前で正解だったな」
「そ、それはどうも…」

お陰で寝不足ですけど…

「あ、そうだ。これお前にやるよ。二番目は…残念ながらやれねぇけど…」

そう言って先輩は学ランの第三ボタンを外すと、俺に投げて寄越した。

「じゃあな、和也」

右手を振りながら小さくなる背中を、小さなボタンを握り締め、深々と頭を下げて見送った俺の足元を、幾粒もの涙が濡らしていた。



そして今…

何の気の迷いか、教え子を見送る立場となった俺の胸ポケットには、あの日、あの人から貰った第三ボタンが、今も大切に入っている。

ほろ苦さだけを残して終わった初恋と、いつまでも色褪せることのない青春の思い出として…


おわり
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