Welcome to our party 2 【気象系BL】
第96章 第三ボタン by Namako
とは言っても、人前に立つことも苦手なら、”送辞”に相応しい立派な文章が浮かぶ筈もなく…
結局松本の手と知恵を借りることにした。
雅紀は…この場合頼りにならないだろうと、敢えて声をかけることはしなかった。
そうして漸く出来上がった文章を、声に出して読みあげてみる。
「どう?中々の出来だと思わない?」
「まあ、な…」
確かに、流石に”使える男”松本が考えただけあって、簡潔で、それでいて涙を誘うような文章に仕上がっている。
でも、何かが物足りない。
そう思って何度か繰り返して読んでみる。
あ、そっか…
物足りなさを感じるのは、それが卒業生に向けられた文章であって、櫻井先輩に対してじゃないからだ。
だからか…
「なあ、少しだけ手、加えてもいい?」
「いい…けど?」
俺は松本の同意を得てから、最後の一文だけを書き換えた。
多分誰にも…もしかしたら、櫻井先輩本人にだって伝わることはないだろうけど、それでも自分の想いをその一文に込めたかった。
きっと一生伝えることのないだろう言葉を、どうしてもあの人に…櫻井先輩に届けたかったんだ。
叶うことのない想いを…