第77章 大人への階段　by みきちん

真新しいスーツに身を包む潤。


まさに門出ってやつだ。



子どもから大人へ。

そして俺の元から去り、新しい日々へ。



「先に車を回してきます」


やっぱりお前はエスパーだ。


「潤」

あの日のように潤が振り返る。



始まりのキスは潤。



「成人、おめでとう」

柔らかいとは言えない潤の頬を手で包み、
潤の唇に俺のそれを重ねた。



最後のキスは俺。



「行ってらっしゃい」



俺のいない輝く未来へと……



ｺﾝｺﾝ…


「車の準備が出来ました。
潤さま、和也さまもお待ちです」


潤が一瞬だけ俯いたけど……

再び顔を上げた時に俺に向けた表情は
まだあどけなさの残る大好きな笑顔。


「わかった……兄さま、行ってきます」

振り返る事なく潤は歩き出す。


「櫻井」

「はい」

「ありがとう」

「いえ」

ペコリと頭を下げると、潤の後を追っていった。



いつもはノックしないくせに……


でもそのお陰で俺も潤も笑顔で別れられたよ。