Welcome to our party 2 【気象系BL】
第72章 彼は誰時 ─Before dawn─ by あにゃ
ハドソン川に程近い、古めかしいアパートのドアの前で、俺は大きく深呼吸した。
心臓が口から飛び出そうって、ホントにあるんだな…。
何度も深呼吸を繰り返し、それでも緊張は解れなくて。
だけどいつまでもここにいるわけにはいかないし、と意を決してチャイムを鳴らそうと手を上げた瞬間。
ガチャリとドアが開いた。
「えっ…潤…?」
現れたのは
会いたくて会いたくて堪らなかった人
たった1人の兄
そして………
「…なん、で…?」
驚愕に見開かれる瞳。
3年ぶりにみた姿は、記憶の中とあまり変わらなくて。
それが余計に、あの頃の俺たちを呼び起こしてくれた。
なにも、変わらない。
あの頃と、なにも。
俺の智への、気持ちも……
「…会いに、来たんだ」
「…ダメ、だよ…」
「智に、会いに来た」
「ダメだって!だって俺たちっ…」
「じゃあ、なんであんなことしたんだよっ!」
智の喉が、ヒュッと音を立てる。
「なんで、俺を抱いたの?なんで、黙っていなくなったの?なんで、なんでっ…」
その後は、言葉にならなかった。
ただ溢れる涙を拭うことも出来ずに立ち竦むだけで…。
「…潤…ごめん…」
そんな俺を、智は顔を歪めて見つめていた。