Welcome to our party 2 【気象系BL】
第38章 Bitter sweet by つぎこ
…。
部長、呼んでるしな。
距離は十分…
慎重に照準を定め…
絶妙なスナップで放った小さな塊は、黒縁眼鏡の前を弧を描くよう経由して、濃紺のマウスパッドの脇に転がった。
我ながら惚れ惚れするような軌道だった。
なのに反応は、無で…。何事もなかったように、消しゴムという小さな塊だけが、ポツンと取り残された。
そこに満を持して、白いデミタスカップが現れた。
櫻井さん、だ。
エスプレッソの芳醇な香りに、大野さんの鼻がピクリと動く。
首を左右に揺らし…
至極当然のように、小さなカップを口に運んだ。
喉元がゆっくりと上下に動いて
白く曇った眼鏡の奥に色を帯びてくると、纏う空気が変わってきた。
櫻井さんが部長に目配せをする。
ここで彼を扱うことのできるのは、同期である櫻井さんだけで…。
この二人のデスクが向かい合わせに配置されているのは、どうもそういう理由らしい。
別にどうでもいいけど…。