第2章 刺激的な口付け。・:+°家康。・:+°
軍議も終わり、御殿に戻った家康は溜まった書簡を片付けるべく自室に向かう。
向かう途中、台所近くの縁側に見慣れた後ろ姿を見つけた。
「夕霧?」
呼んでみたが返事はなく。
はぁーっとため息をつきもう一度呼んでみる。
「夕霧・・・聞いてる?」
今度も返事はない。
いくら何でも集中しすぎだろ・・・耳ないんじゃないの?
更に大きいため息をついて今度は夕霧の真後ろに立ち声を落とす。
「ただいま。」
待ち侘びていた声が頭上に落とされ夕霧は声のする方を見上げた。
「あっ!?家康っ!お帰りなさい!」
真後ろにいた事にも気付かず、慌てた様子で家康の顔を見たが、すぐにその顔が笑顔に変わる。
「さっきからずっと呼んでるんだけど・・・」
「ごめん!全然気づかなかった。」
謝りつつも家康の顔を見る夕霧は嬉しくて仕方ないと言った表情だ。
「で、何してんの?」
「さやえんどうの筋取りだよ。手が空いたからお手伝いさせてもらってるの。」
膝の上の竹笊の中には沢山のさやえんどう。その横には取った筋を入れる小さい笊が置いてある。
「別にあんたがやらなくてもいいのに。」
「やりたいからやらせてもらってるんだよ。楽しいよ、筋取り。」
夕霧の横に座った家康にやる?とばかりにさやえんどうを差し出した。
そのさやえんどうを受け取り、家康も筋を取り始める。
「家康が手伝ってくれてるって知ったら女中さん達ビックリしちゃうね。」
「だろうね。」
二人でふふっと笑うと最後の一つを片付ける。
「ありがとう家康。お陰で早く終わったよ。」
「別に・・・早く終われば夕餉の支度も早くなるかと思っただけ。」
「ふふっそうだね。ありがとう。」
いつも通り素直じゃない家康に言葉を返し、笊を持って立ち上がるとヒョイっと横から取り上げられた。
「あっ・・・家康?」
「さっきみたいに返事しないくらいぼーっとしてると転んでぶちまけそうだから。」