第16章 内緒。・:+°政宗。・:+°
「そうだな。じゃ先もらうぞ。」
摘んで口に入れる。まわりに絡んだ糖蜜が飴状に固まってカリカリと先程とは違う食感がする。
美味い・・・
「これ、どうやって作った?」
料理のことになると真剣だな・・・
真っ直ぐな瞳を夕霧に向ける政宗を見つめて思う。
でも、これは言えない。・・・というか教えたくない。
「内緒。」
「は?」
「食べたかったらまた政宗だけに作ってあげる。」
「教えろ。」
「やだ。」
「じゃあ言いたくなるように仕向ける。」
髪を梳きながら優しく焦らす様に口付ける。
「やっ・・・政宗っ・・・」
夕霧はぐいっと政宗の胸を押して突き放した。
「一つくらい政宗に私じゃないと出来ない何かが欲しいの。」
私だけしか出来ない政宗を喜ばせる術が。
いつも政宗には貰ってばかりだから。
「そんなの必要ねえ。」
「何で!?駄目なの?」
思わなかった政宗の反応に目尻に涙が溜まる。
分かってよ・・・与えられるだけは嫌なの・・・
今回内緒でお菓子を作ろうと思ったのもいつも自分ばかりが与えられているから。
たまには政宗に喜んでもらいたかった。
潤んだ瞳を向けると政宗は親指で零れそうな涙を拭った。
「十分与えられてる。」
「そんな事ない・・・」
「お前が俺のそばにいるのが俺にとって一番だ。お前の代わりは誰にも出来ない。」
そう言いながら夕霧の髪を撫でる。
「今回は引く。その代わり俺だけにまた作ってくれ。」
「わかった・・・」
約束の様な口付けを交わして二人は、微笑んだ。
「お前しか作れないんだろ。」
「でも、昨日も作っ・・・」
「じゃあ教えろ。」
「もうっ・・・」
ここ最近、毎日のように呼びつけられては御殿に芋けんぴを作りに来ている。
政宗の事だ。作り方なんてとうに分かっている。
「作り方分かってるくせに・・・」
「ああ、分かってる。」
お前に作ってもらうのが癖になったんだ。
これからも俺だけの為に・・・。