第1章 夏祭り。・:+°信長。・:+°
「信長様・・・」
「綺麗だな・・・」
「はい。」
腰に手を回し、ぎゅっと抱きしめる信長の手に自分の手をそっと重ねる。
「お祭りには行けませんでしたけど・・・信長様と二人っきりで花火が見れてよかったです。」
「秀吉との祭りも楽しかったのであろう。」
そこの言葉に慌てて振り向く。
え?今なんて・・・?
「土産は嬉しかったが・・・他の男とは行くな・・・」
その言葉に目を丸くした夕霧は頬が段々と熱を帯びてくるのを感じる。
信長様が・・・?そんな訳・・・
「焼きもちですか?」
まさかと思ってはみるが、うれしさのあまりつい尋ねてみる。
「嫉妬は弱い人間のする事だ。俺が嫉妬などするはずもないだろう」
フッと笑い言葉を紡ぎ終えた唇を夕霧の額に優しく落とす。
ドォォォォォォン・・・
きっとそうなのだろう・・・自分のせいで行けなかった祭りとは言え、別の男・・・しかも秀吉に嫉妬心を抱くなど・・・
今までこんな感情を抱いた事もなかった。
自分の変わり様に可笑しさがこみ上げる。
額から唇を離した信長は花火の光に映し出された夕霧を見つめ微笑む。
この女は誰にも渡すまい・・・
「来年こそは共に行かねばな」
その言葉に夕霧も満面の笑みを浮かべ信長の額にこつんと自分の額を重ねる。
「絶対、約束ですよ」
ドォォォォォォォン・・・
二人で交わした約束を忘れない様にどちらからとも無く口付けを交わす。
来年こそは一緒に・・・
次々と打ち上がる花火と共に二人の甘い時間はゆっくりと過ぎていった。
終