第14章 兄と弟。・:+°信長、家康。・:+°
ある昼下がり。夕霧は昼餉を天主で信長と一緒に取った後、新しい着物を仕立てる為に採寸をしていた。
裄丈を計り終えた頃襖の向こうで声がする。
「失礼します。」
「家康か。入れ。」
襖が開くと家康は信長の前まで進み腰を下ろす。
「例の件、滞りなく片付きました。」
「ご苦労。今日はゆっくり休め。」
「ありがとうございます。」
「あ!家康!」
スッと立ち上がる家康を夕霧が引き止める。
「何?」
いつもの愛想の無い返事が返ってくる。
「ちょっと話していかない?」
「いい。忙しい。あんたも採寸中でしょ?」
「採寸は大丈夫!聞きたいことがあったんだけど・・・ダメかな?」
夕霧は少し申し訳なさそうな顔で家康を見つめる。
あーもう。と言う言葉とともにボソッと聞こえた言葉。
「・・・手短にして。」
「はい!」
「何なんですか・・・手短にって言ったのに・・・」
家康が話を聞いてくれると喜んでいた本人はお茶を入れてくると天主を出て行ってしまった。
「知らん。どうせ暇なのだろう。たまには夕霧に付き合ってやれ。」
はぁ・・・とため息をつき、夕霧の事となると途端に甘くなる信長を家康は怪訝そうに見つめた。
「お待たせしました。」
襖が開き、夕霧が御盆にお茶と甘味を運ぶ。
配り終えたのを確認して、腰を下ろした夕霧を横目に声をかける。
「・・・で、何なの・・・話って。」
待ってましたと言わんばかりに夕霧は口を開く。
「ずっと二人に聞きたかったんです。
お二人は幼少の頃一緒に過ごされた時期があったって仰ってましたよね?」
「だから・・・何?」
「ずーっと思ってたんです。信長様と家康って今でも兄弟みたいだなぁって。」
ニコニコしながら家康と信長を交互に見ている夕霧。
家康は眉間に皺を寄せながら答える。
「どこをどう見たらそう見えるの・・・?」
「え・・・?全部だけど・・・。」
不思議そうな顔をする夕霧を見て更に皺を寄せる。