第7章 金平糖。・:+°信長。・:+°
夕霧
「それにしても、信長様が秀吉さんの話を聞くなんて珍しいですね」
いつもなら、小言をもらいつつも金平糖はしっかりと手の中に収まっている。
信長
「今宵は夕霧と久々にゆっくり過ごすと決めていた。そんな時まで金平糖はいらんだろう・・・」
台所へ寄るのはいつもの日課のようなものだ。・・・笑いながら信長は答えた。
信長
「だが・・・」
空になった瓶を見つめ、信長が呟く。
信長
「ないと思うと欲しいものだな・・・」
夕霧
「今からもう一度行きますか?」
そんな夕霧の言葉に目を丸くするとクスクスと笑い始めた。
信長
「貴様からそんな言葉が出るとはな・・・よし、行くか」
天主を出て、二人は台所へと向かう。
信長
「あやつめ・・・考えたな。」
いつもの場所から無くなった金平糖の壺。
夕霧
「いつもの所にないのなら他の棚を・・・ 」
信長
「いや、探す必要はない。策を練り直すぞ。来い夕霧。」
天主に戻った途端に夕霧が口を開く。
夕霧
「台所の他の場所って事は考えられませんか?」
信長
「ありえんな。あやつがすぐ見つかる場所に隠す訳がない。最近毎日の様に盗んでいたからな・・・あるとすれば・・・秀吉の御殿だ。」
夕霧
「まさか今から秀吉さんの御殿に忍び込む気ですか?」
信長
「いや・・・佐助・・・」
佐助
「はい。」
夕霧
「佐助くん・・・?何で?ここ敵陣だよ?」
佐助
「今回は特別なんだ。」
以前夕霧がワームホールで戻ってきた後、礼にと、信長は佐助に色々な鋳物で作ったまきびしを送っていた。
佐助
「あの織田信長が俺のまきびし好きを知ってくれていたなんて・・・」
佐助は感極まって瞳を潤ませている。
信長
「あれだけ書物の合間合間にまきびしの絵があれば誰でも分かる。」
以前見せてもらった大学ノートには数字や計算式で埋まっていたのだが気分転換の為なのかまきびしの絵が所狭しと並んでいた。
佐助
「夕霧さん・・・今日はそのお礼でここにいるんだ。」