第7章 金平糖。・:+°信長。・:+°
夕霧
「本当に今日は月が綺麗ですね・・・」
天主から張り出した床張りの板に二人で腰を下ろし、杯を交わす。
信長
「飲め・・・夕霧」
夕霧
「ありがとうございます。」
夕霧の杯に酒を注ぎ終えると、ふと手元にある硝子瓶を手に取る。
信長
「あと二粒か・・・」
瓶の中でカラカラと鳴るそれをみて夕霧はクスッと笑う。
夕霧
「明日までお預けですね。」
信長
「そうだな・・・」
瓶からコロリと二粒の金平糖を掌に乗せる。
手の中でキラキラと月明かりを集め輝いている。
信長
「口を開けろ。」
夕霧
「あと二粒しかありません。大事に食べてください。」
信長
「丁度二粒だ。早く口を開け。」
夕霧が口を開けると、長い指でポイッと口に放り込む。
その後、もう一粒を自分の口に放り込んだ。
信長
「うまいな。」
夕霧
「はい。美味しいですね。」
コロコロと口の中で転がすとじんわりと甘みが広がる 。
夕霧が横目で信長を見つめると、美味しそうに顔を綻ばせている。
か・・・可愛いっ・・・
信長
「何だ貴様・・・」
夕霧
「ぁ・・・何でもありません。」
信長
「ちゃんと言え。」
夕霧
「信長様・・・可愛いなって・・・」
信長
「それは貴様の方だろう・・・」
どちらからともなく口付けを交わす。お互いの金平糖が口の中で踊る。
暫らくすると二人の唇が離れた。
夕霧
「無くなっちゃいましたね。」
信長
「もう少し食べたいんだがな・・・」
------------------------------
それは戌の刻の話。
湯浴みを済ませた信長はふらっと台所に立ち寄る。
女中
「信長様・・・」
信長
「大丈夫だ。こんな時刻ならあやつも来るまい。」
棚の上に手を伸ばし、いつもの場所を探る。
「信長様・・・」
信長
「本当に貴様は勘が鋭いな。」
秀吉
「昨日硝子瓶にお渡しした分で我慢下さい。明日、必ずお渡します。」
信長
「まぁいい、今宵は貴様の言う事を聞くとしよう。」
------------------------------