第19章 お手伝い。・:+°秀吉。・:+°
夕刻
城下では子ども達が家路を急ぎ、露店も少しづつ外に出た品物を片付け始める頃。
今日は一段と綺麗だな・・・
西の空が真っ赤に染まり夕闇と混ざり掛けた何とも美しい景色に夕霧は心奪われていた。
あ、ダメダメ。日が暮れる前に行かないと迎えに来てしまう。
ただでさえ仕事を押してまで世話を焼いてしまう人だ。余分な仕事は増やさないようにしたい。
早く帰ろう・・・あの人の元へ。
ぎゅっと手に持った包みを握りしめ彼の待つ御殿へと急いだ。
玄関先で女中が夕霧の姿に気づいて駆け寄ってきた。
「これは夕霧様。秀吉様を呼んで参りますね。」
「あぁっ!ダメです!!」
「すみません。ついいつもの様に・・・」
申し訳ない顔をして深々と頭を下げる女中を見て、夕霧は慌てふためいた。
「ごめんなさいっ!せっかく気を使ってくださったのに・・・秀吉さんを呼ぶと忙しいのに手を止めちゃうから・・・」
「夕霧様はお優しいのですね。秀吉様は自室にいらっしゃいます。」
「ありがとうございます!」
微笑む女中に礼を言い、秀吉のいる部屋へと向かった。
秀吉の部屋に面した廊下に出ると少し開いた隙間から紫煙が微かに燻っているのが見えた。
その紫煙の元へ辿るように静かに足を運ぶ。
隙間を除くと山になった書簡と睨めっこしている秀吉の姿が映る。
時折煙管に口を付けふーっと紫煙を吐き出すその仕草が何とも艶っぽく目が離せない。
かっこいいなぁ・・・
一つ一つの所作どれをとっても見惚れる彼の姿を見つめたままその場に座り込んだ。
このまま見つめていたいが気づかれるのも時間の問題だ。
政宗に習ったみたらし団子の包みに目を落とすと、ふと思いつく。
今お茶でも入れて来たら喜んでくれるかな?
台所へ向かう為、そっとその場を離れようと立ち上がったがフラッとバランスを崩し、咄嗟に襖に手を添えてしまったため、僅かにだが物音を立たてしまう。
しまった・・・!
「・・・夕霧?」