第7章 追憶
どのくらい寝たのだろうか。
瞼越しでも、強いオレンジ色の西日が差しているのがうっすらと分かる。
少し口惜しいが、ちょっとずつ目を開ける。
しかし、そこにあったのはいつもの見慣れた天井ではなかった。
唐突に枕やベッドにも違和感を覚え、上体を起こし、部屋をキョロキョロと見回す。
ここが病院の病室だと気がつくのにそう時間はかからなかった。
そして、自分の寝ていたベッドの左には、椅子に座った郡先輩が窓際に頬杖をついたまま寝ていた。
どうして自分がここにいるのか、ぼんやりとした記憶を辿っても全く分からなかった。
パンケーキ屋さんで完食したところが私の記憶のセーブポイントだった。
困った私は、上司に声をかけた。
「郡先輩」
すると、先輩はすぐに飛び起きて...
「ちさき...!!体調は大丈夫?体に異変もない?熱は?今すぐ先生呼ぶから!!」
と口ばやに言って、私のおでこに手を当てた。
「ちょっ...!先輩いきなり何する...っ!えっ?」
抱きしめられた。
うわあああああ死んじゃうああああ何これめっちゃ恥ずかしいんですけどまじで先輩急に何をうわあああああ近い!近い!!反則すぎる
と声にならない叫びをしていたら、やっと先輩の腕から解放されて、
「ほんとに、ちさきが生きててよかった...3日以上原因不明の高熱で寝たきりだったから、すごく、ものすごく不安だった」
先輩が「はぁ...」と安堵していると、先生がやってきた。
聞くところによると、先輩は私が倒れてからずっと私の傍にいたらしい。
ほんとに、いい先輩を持ったなと思った。
その日の夜、夢を見ていた。
小さいころの夢。
私は、幼なじみの優兄と、誰かと遊んでいた。
「優兄、すごい!!!」
優兄からお花で作られた指輪を渡され、キャッキャッ騒ぐ私。
???「うるさいちさき!」
優「どーせ諒には作れないもん!」
優兄と諒が喧嘩を始めた。
なんで今までずっと忘れてたのだろう...幼なじみは優兄だけじゃなかったのに。
そう、あの日も私たちは3人で遊んでいたんだ。