第7章 太宰治✕ポレアフィリア
「はぁ、ハァ、……こちらすず。現在敵地への侵入クリア。次の指示を」
少し肌寒く感じるような月夜の晩。
古いビルのとあるワンルームではぁはぁと息を少し切らしながら、私はワイヤレンス型のイヤホンに手を当て『あの人』に指示を仰いだ。
そのワンルームの明かりは月の光に僅かに照らされているだけで薄暗く、かなり視界が悪い。
人の気配は今のところ無く、一人だけの声はまるで反響するかのように大きく耳に届いた。
「ふぅ‥‥」
走っていたからか、それとも緊張しているからか、理由は定かではないが今だに速く動く心臓の鼓動を抑えるために
背後にあるコンクリートの柱に背中を預けて息を吐く。
いや、緊張するのも無理は無いのかもしれない。
私は今、重要な任務中なのだから。