第6章 轟焦凍✕アコースティッコフィリア【音響愛好】
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轟side
───────そうか、
そうだったのか‥‥‥‥。
すずの話を聞いて、俺は1つの事実を理解した。
というよりは、ようやく思い出せた、と言うべきか。
やっと欠けていたパズルのピースが見つかったような、そんな感覚。
俺自身も、ずっと忘れていた。
無意識に自分自身が思い出そうともしなかったこと。
何故、あんな大切な事を……
否、その理由など等に理解している。
(……母さん‥‥)
無意識に心の中で呟いた。
「─────轟くん?」
「!!」
彼女の声で現実に戻される。
意識していない内に驚いたような表情をしていたのか。
少し不安そうなすずが俺を見つめる。
「‥‥‥‥いや、何でもねぇ。」
そう俺は彼女に告げた。
まだ、その時ではない。
彼女に真実を告げるのは、今ではない。
事実を告げれば、彼女のあの美しい歌声が聞けなくなるかもしれない。
そんな事は、あっては成らないことだ。
それほどまでに、俺は彼女の“音”の虜なのだから。
そうやって俺は事実に蓋をした。
彼女がそれを知るのは、まだ先の話。