第4章 葉は緑、空は雨色
撫でられた頭を思わず触り直して、ポカンとしていれば、
「うえーんって泣く子なかなかいないよね。」
と、いつもの意地悪でひねくれ者な雰囲気の沖田先輩に戻ってる。
「カップケーキ、6個もそのまま抱えて来るなんて…可愛いいし。そんなの夢主(妹)ちゃんくらいじゃない。」
ニヤニヤと、意地悪な笑いを浮かべてる。
あ~もうっ…先輩のバカっ…やっぱり私はからかわれてる!
「…元気で可愛いい夢主(妹)ちゃんは特別だよ。」
再び、朝と同じ言葉が脳裏に浮かぶ。そうやって…私はまんまと舞い上がってしまうようなことばかり言って…
「からかわな――」
私の言葉を遮って、
「僕は本当のことしか言わないよ?」
と、少し声を低くして、優しくそう言われてしまえば、私はもう真っ赤な茹でダコになるしかなかった。
「あはは。夢主(妹)ちゃん真っ赤だよ?うん。やっぱりかわいい。」
沖田先輩はケラケラと笑って、優しい目で私を見てる。
何も言えずに涙をためて真っ赤になってる私に、もうお昼休み終わるよ、と言って、私の腕から残りのカップケーキを取っていく。そして、それを片手で抱えると、私の手を掴んで階段を下りはじめた。
勘違いして私が舞い上がって、沖田先輩のことをどんどん好きになってしまっても…これはもう沖田先輩が悪いってことにしよう。
クラスメイトや、先輩達の言ってることも、今はもうどうでもいい。
お姉ちゃんの妹だから?…例えそうでも、ラッキー!って思うことにしよう。
沖田先輩…覚悟してくださいね?私はこれから何も考えずにいちいち舞い上がることするので。
今更…そんなつもりじゃなかった…なんて言わせないんだから。
沖田先輩に掴まれた手は、なんだかまだ熱い気がして、ちょっとだけ手を繋いでしまったことに、さらに顔を赤くしながら、自分の教室まで走った。