第2章 サクラ散る頃
なんだかひとりぼっちになった気分。
走って家に帰ってきて、靴も揃えず部屋までさらに走って、制服も脱がずにベットに横たわった。
ころん、と仰向けになって目を閉じる。
頭の中は、いろんなことがぐちゃぐちゃに混ざって、何を考えていいのかわからなくなってる。
部活をしてる一君の姿を見るのははじめてだった。
袴を着て、いつものように姿勢よく立っていて、真剣な顔。
私の知らない一君だった。
そして…
あの優しい目。
私の知らない目。
一君は私にいつも優しい。
でも…あんな風な優しい顔は見たことなかった。さっきほんの少しだけしか見てないけど…体育館での一君は、全部私の知らない一君だった。
怖い。
足音が聞こえるみたいに、終わりが近づいてるのがわかる。
隣にいたあのコ…ただメモをとっていただけなのに…たまたま隣にいただけなのに…一君の隣がぴったりだった。
遠い。
一君の隣は私の場所なのに。
遠くて遠くて…私には行けない場所に感じた。
ああ、そうだ…ふだんの学校でもそんな気がする。
どんどん一君が遠ざかってく。
「斎藤君が不憫――」
先生に言われた言葉を思い出す。
私といたら、一君は不憫なの?
「たぶらかしてるのでしょう?」
たぶらかす?私は一君のことが好きなだけなのに。
私と一君が恋人なのはいけないこと?…私が学校でどうしようもないから?
土方先生は気にするなって言ってくれたけど…
気にするよ…先生。
あのコなら・・・?
頭がぐるぐるする。
そういえば、裏門に向かう途中、原田先生に腕をつかまれて、どうした?って聞かれたけど、振り払って走って帰ってきちゃった…
まぁいいか…月曜日に謝ろう。
…着替えなきゃな。
具合が悪いわけではないのに、体を起こすのがだるくて辛い。