第2章 サクラ散る頃
…ここは
「保健室…?」
小さく呟いた私の声に、カーテン越しの声はピタリと止まり、そして、
「大丈夫??あなた倒れちゃって、ここまで運ばれたの。痛いとことかない?」
三年生?かな…大人っぽい雰囲気の女子生徒が、カーテンを少し開けて、話かけてきた。私は…
「倒れた…?」
「そうそう。原田先生、あなたを抱えてすごい剣幕できたんだよ。」
「は、原田先生に抱えられて?」
「うん。あっまだ起き上がらない方がいいかも!」
「ほらほら、君はお腹が痛いという名目でここにきたのでしょう?雪村君に絡まないでおとなしくしていなさい。」
「は~い」
山南先生にたしなめられて、
「お大事にね?だめだよ?ちゃんとたべなきゃ」
と、言って離れて行った。
誰なんだろう?きれいな人だな…なんてボーっとしていると、
「失礼しますね。」
そう言って山南先生がカーテンを開けた。
「だいぶ顔色がよくなりましたね。」
「あの…私は…倒れたって…」
「ただの貧血だとは思いますが…倒れてしまった程ですから、まだ休んでいたほうがいいでしょう。」
「貧血ですか…」
朝から何も食べずに走ったからかもしれないなぁ…
「気分はどうですか?」
「とくに何も…大丈夫そうです。」
「そうですか。では、お昼まではここで休んでいなさい。」
「はい。ありがとうございます。」
カーテンが再び閉められ、山南先生は戻っていく。
「ほら、君も。ここにいないで眠るなら寝なさい。私も忙しいんですよ。」
「は~い。」
さぼり?なのかな…なんだか山南先生と仲良しみたい。山南先生って怖いのかと思ったけど、とっても優しい。
お昼まで…ってことは、四限目は出ないのかぁ。たしか数学だったっけ。少しラッキー。
そんなことを考えてたら眠くなってきた。
そういえば、斎藤先輩は数学好きなのかな?先輩は勉強も出来そうだし、スポーツは…部活はなんだろう…
無限に広がる斎藤先輩はどうなんだろうをくるくると頭の中でめぐらせて、私は眠りについた。