第2章 サクラ散る頃
はぁはぁ…上り坂を走るのは辛い…
「千鶴っ!早くしないと遅刻しちゃうよっ!」
「ま…まって平助君!」
うっかり寝坊してしまって、慌てて家を出て走ってたのだけれど…
幼なじみの平助君は、いつもより遅い時間に家から出てきた私にびっくりしたのか、少し進んだ道からわざわざ戻ってきてくれた。
「平助君まで走らなきゃならなくなってごめんね?」
「何言ってんだよ。俺はいつもこんなかんじだし。それに、千鶴が寝坊なんて珍しいからいいんだよ。」
「ありがとう」
パタパタと必死に走ってなんとか校門の前。
間に合っ―――
ガラガラガラ
「これより後の者は遅刻と見なす。生徒手帳を出して並べ。」
ああっ…間に合わなかった…。噂には聞いていたけれど、斎藤先輩は厳しい。
斎藤先輩は遅刻者の名前をチェックしていく。
「…南雲の妹か。めずらしいな。南雲とは別なのか。」
「…はい。薫は早いので…。私は寝坊しちゃいました。」
「…そうか。」
記録帳に目を落とす先輩が、とっても綺麗だな~なんて少し見とれてしまう。
「斎藤先輩、毎朝ご苦労様です。」
私がそう言えば、斎藤先輩は少し驚いた顔をしたけれど、すぐにいつものお顔になって、
「…ありがとう」
と、言って、目を逸らされてしまった。
斎藤先輩の姿勢はとても綺麗。
きっと毎日きちんとした生活してるんだろうな。ご飯の食べ方もきれいなんだろうな…ノートとか…すごくきれいだったり…とかなんとか斎藤先輩のことを考えながら教室へ向かう。
「んじゃ、俺はこっちだから。またな!」
平助君は学年が一つ上で、薫と同じクラス。そういえば、斎藤先輩も一緒なんだよね。
同じクラスに斎藤先輩がいたら、どんな感じなんだろう…授業もきっと、きっちり受けてるんだろうな…
「おはよう千鶴。珍しく遅かったね。…なんか顔がにやけてるよ?」
私としたら、斎藤先輩のことを考えて、どうやら顔がにやけていたみたい。恥ずかしいっ!
「お、おはよう夢主(妹)ちゃん。」
顔が赤くなってるのがわかる。
「なになに?好きな人のことでも考えてた?」
「すっ…すきな人っていうか…」
夢主(妹)ちゃんはニヤニヤしてる。
「…さ、斎藤先輩っていつもきちんとしてて綺麗だな…って……」
「ふ~ん」
「もうっ!ニヤニヤしないでっ!」