第11章 夏の終わりと蝉の声
余計な事聞かないでよ、って空気が言ってる気がして、それ以上は聞かないけど…
ソファには座らずに、相変わらずその下のラグに座ってテレビを見てる総司を見る。
背も高いし…なんだか茶色い髪の毛の雰囲気とかも似合ってるし…顔もかっこいいし…性格は…まあ優しいんじゃないかな?気も合うし、仲良しだし…。
あれー?私、なんで総司を好きにならないんだろ?
今まで散々一緒にいたけど、ドキドキとかしないなぁ…。
「なあに?」
キッチン越しに、総司を見過ぎてたのを気付かれたけど、もうちょっと見てみる。
ついでだから、総司の目の前に座った。
さすがにびっくりしてる総司の顔を、じいっとそのまま見てみた。
うーん…
こんなに近かったら、左之助だったらドキドキしちゃうなぁ。
もう少しだけ近づいてみれば、
「なに?夢主(姉)ちゃん、僕と浮気するの?」
なんて言われちゃったけど、総司の表情はなんだか冷めてる。
「違うよー。こーんな近づいてもドキドキしないのはなんでだろう?って実験?検証?してるの。」
「へえ…じゃあさ…」
そのまま腕を掴まれて、気がついたら私はひっくり返ってて、総司が目の前で見下ろしてた。
「これでも平気?」
なんて言う総司の顔は、きっと総司の事が好きな子ならひとたまりもないんだろうなぁって思うほどに、なんだか切ない。
っていうか…
「ごめん総司。平気みたい。」
そう言いながら総司の腕を持ち上げて、状態を起こす。
それはこんな体勢でも、総司が何かするわけじゃないって知ってるからなんだけど。
「まあ今更ときめかれても困るけどね。」
なんて言ってる総司は、さっきの切なげな表情ではなくて、いつもの総司に戻ってるけど…やっぱり今日は変な気がする。
「大丈夫。左之助一筋だから。」
体を起こしたばっかりでかなり近い距離だけど…恥ずかしいとかも思わない。
「僕もそんな風になれたらいいのに…」
ぽつりと呟いて、総司は立ち上がった。
ピンポーン
「あ!左之助だ!」
チャイムの音に胸が高鳴る。
ドキドキが止まらなくて、苦しくなる。
ふと、総司の呟きを思い出した。
寂しそうな顔が気になったけど、玄関を開けたら左之助がいるっていう事が嬉しすぎるから、それは頭の隅っこにとりあえず置いておくことにした。