第11章 夏の終わりと蝉の声
学校に進路の事で行かなきゃいけなかったから、ついでに帰りに剣道部に寄ってみた。
僕がいないその場所は、しっかり動いてて…なんだか居場所がない気分。
なんだか居づらくなって先に帰ってきた。
まあ…夢主(妹)ちゃんと帰るのも気まずいし…丁度いいかな…って思ったんだけど…
夕方だけどまだ明るい空は、夏休みが始まる頃より暗い。
この前まで夢主(妹)ちゃんと一緒にこの蝉の声を聞いてたはずなのに、なんで今僕は一緒に居ないんだろう。
夢主(妹)ちゃんの気持ちを聞くのが怖かったから、僕は耳を塞いでる。
でも…いつもの帰り道に夢主(妹)ちゃんが居ないのも、寂しいな。
もう帰って来てるかな?
今から引き返せば途中で会えるかもしれない。
そう思ったら、足が勝手に動いてた。
来た道を引き返す。
空が灰色に染まって来て、あっという間に豪雨になった。
降りそうな気がして持って来たビニール傘が役に立って、夢主(妹)ちゃんは濡れてないかな?なんて考える。
少し小走りをはじめた僕の目に飛び込んで来たのは、反対側のバス停の屋根の下にいる…夢主(妹)ちゃんと平助。
なんで平助がここにいるの?
家は反対側なのに。
二人は並んで立ってるけど、少しだけ距離があることに安心して、声をかけようとしたのに…
平助が夢主(妹)ちゃんの手元のアイスを食べた。
心臓がドクンと大きな音を立てるように動き出す。
平助は照れてる様子もないし、夢主(妹)ちゃんも狼狽えてる様子がない。
目の前が真っ暗になるような…瞼が重くなるような…そんな感覚になった。
そのまま通り過ぎて歩く。
家は反対方向。
僕はどこへ行くんだろう?
そのまま傘をさすのも面倒になって、道の途中で雨に降られて困ってるおばあちゃんに傘をあげちゃった。
豪雨の中、目的地がないまま歩く。
僕はいったい何をしているんだろう?
突き放したのは僕だよ。
夢主(妹)ちゃんの気持ちを聞く勇気も無かった。
女の子なんてどうでもよかったはずなんだけどな…
落ちてくる大粒の雨が、空を見上げた僕の片目にヒットして…泣いてるみたいでカッコ悪い。