第11章 夏の終わりと蝉の声
そんな日々も今日でおしまい。
少し寂しくなってる僕の空気のせいなのか、夢主(妹)ちゃんもいつもみたいに話をしなくて、すごく静かな帰り道だった。
夢主(妹)ちゃんは僕に好きだって伝えようとしてくれた。
鈍感だと思ってた一君達は付き合いはじめたみたいだけど・・・僕はどうするつもりなんだろう。
もう少しこのままでいたい。
なんて・・・勝手すぎるかな?
恋人となるのはきっと簡単だけど・・・いつか壊れてしまうかもしれないじゃない。
そしたら・・・もう今みたいには戻れない。
そんな心配をするくらいなら、今のまま仲良くしている方がいい。
答えが出ないままの関係に、夢主(妹)ちゃんは悩むかもしれないけれど・・・
夢主(妹)ちゃん、君の前で僕はどんな顔をしているんだろう。
一人になった帰り道。
もう夢主(妹)ちゃんの家からは随分遠くて、さっきまで感じてた背中に向けられる視線ももうなくなった。
楽しげに手を繋いで歩くカップルが前から歩いてくる。
すれ違い様に彼女の方に意味ありげに微笑んでみれば、彼氏と手を繋いでるのに赤くなって俯いた。
そしてほら、ちらっと振り向いて僕を見てる。
人の心なんてわからない。
夢主(妹)ちゃんへの気持ちも・・・
夢主(妹)ちゃんからの気持ちも・・・
「酷いよね。ほんと・・・」
夢主(妹)ちゃんが恋人になったら、僕は必ず独り占めをしたくなって苦しめる。
今みたいに知らない誰かに顔を赤くなんてさせられたら許せないから・・・
僕はこのままの関係がいいと思うんだ。
すっかり日を落とした空を見上げれば、合宿所で夢主(妹)ちゃんの膝に赤チンを塗った時の事を思い出す。
あのとき既に、僕にまっすぐ気持ちをぶつけてくれてたのに。
ごめんね。
君のそのまっすぐな心を疑ってるわけじゃないんだ。
秋の匂いが少しまざった風が通り抜けた。
夏の終わりがこんなに寂しいものだなんて、僕は初めて知った気がする。