第10章 【番外編】対煩悩戦の始まり
「おい原田。目つぶっててやるが…卒業するまで待てよ?」
合宿出発前に、土方さんに言われた言葉だ。
なんで土方さんにバレてるんだ?
そんなにあいつにひっついたりしてなかったはずだが…
まぁ、目つぶっててくれるってのはありがてえ。
卒業まで……わかってる。
俺は教師であいつは生徒。
まだ壁は厚いな。
キスはしちまった。ま、外国じゃ挨拶みてぇなもんだからいいだろ?
それにしても…
「おい…てめぇ…ジャージ切るなっつったろうが!」
目の前にはジャージを短く切って土方さんに怒鳴られてる夢主(姉)がいる。
綺麗に伸びる白くて細い足…思わず見入っちまうのは俺だけじゃねえ。
合宿所に着いて、ジャージに着替えて広間へ集合してみれば、夢主(姉)が通れば他校の生徒は振り返るし、部の連中もちらちらと視線を注いでる。
本人は気づいてるのか気づいてないのか…全く気にもせずに飄々としてる。
あげくに、「あっつい…」と言いながらTシャツをたくしあげようとするもんだから俺は気が気じゃねえ。
露出すんな…なんて小せぇことを言う男に成り下がるつもりはねぇんだが…
暑い、とTシャツの裾をを持ってパタパタと扇いでいる夢主(姉)の裾をグイっとひっぱった。
「あんまりヘソ見せてくれるな。あいつらさっきから目のやりどころに困ってるぜ?」
と、苦笑しながら俺は言う。
その言葉に、ちらりと部員の方を見た夢主(姉)に、既にヘソが見えたんだろう数名が赤くなって俯いた。
「あ…見えてた?ごめんごめん。先生ご指摘ありがと。」
あはは、と笑って部員に謝る夢主(姉)に、俺は苦笑するしかない。
お前…絶対わかってねぇな…
ご指摘ありがと、じゃねぇんだよ。
ったく…
「あははは。左之先生も大変だね。」
背後から総司の笑い声。
俺は夢主(姉)の行動にあーだこーだ規制をするつもりはねえんだ。