第9章 西の鬼と東の大将
夢主(姉)の前髪を指で搔き上げると、風間に撫でられていた事を思い出した。
ペロリ、と額を舐める。
「ひゃぁっ」
なんつー声出してんだ。
「お前な…そんな声出すなよ。」
「び、びっくりしただけっ…て…さのすけっ…ちょっ…」
「じゃあ…ここは?」
ぎゅうと目を瞑る夢主(姉)の両耳を優しく撫でた。
「ちょっとっ…んんっ」
目を開けた夢主(姉)は眉を寄せて上目遣いに俺を見ていて、それがまた俺を煽る。
そのまま両耳を無言で撫で続けた。
「さ、さのすけっ…やめっ…んっ」
少し背を反らせて身を捩る夢主(姉)の唇に触れるか触れないかの距離まで近づいて、
「あんまり他の男に触れさせんな?でこじゃなくてココだったら…そんな顔を他の男にも見せる気か?」
なんて言えば、少し涙を溜めた夢主(姉)の目線は俺の唇に向けられてる。
そのまま唇を合わせれば、どうやら耳は相当感じちまうらしく、息が上がった夢主(姉)は、俺にしがみついてきた。
唇と同時に耳から指を離して、そのまま指で唇をなぞると、何か言いたげに俺をじっと見てる。
「なんだ?なんか文句あるか?」
っつーか…耳だけでこんなになっちまって、この先大丈夫か?
「ほら、シートベルトするぞ?」
有無を言わさずシートベルトをしめてやれば、
「さのすけのばか…」
なんて恨めしい声が聞こえてきた。
「なんだ?物足りねえか?」
なんて、余裕ぶった事を言った俺が物足りねえ…なんて言えるわけもない。
あんな可愛いい反応見た後に、それ以上手を出すわけにもいかねえなんて…どんな拷問だよ。
「時間なくなっちまうな。行くぞ?」
本当はこのままこうやってお前にずっと触れていたい。
そんなどうしようもねえガキみてえな欲望を押さえ込んで、車のエンジンをかけた。