第9章 西の鬼と東の大将
広い会場内は、沢山の掛け声と竹刀の音で、喧騒がずっと続いていたのに、今は蝉の鳴き声しか聞こえない。
ついについに・・・
沖田先輩の出番が来た。
準々決勝も準決勝も、結局平助先輩と斎藤先輩までで終わってしまって、沖田先輩の出番は無かった。
どんどん勢いづいて勝ち抜いていく平助先輩もすごくかっこいい。
準決勝で負けちゃったとき、すごく悔しそうだったけど・・・
「あーあ。夢主(妹)にいいとこ見せたかったのになー」
なんて言う平助先輩に、不覚にもどきりとしてしまった。
斎藤先輩の試合の写真、お姉ちゃんはちゃんと撮って千鶴に送れたかな?
決勝戦は、やっぱりあの金髪の人がいる学校で・・・平助先輩も斎藤先輩も負けてしまって、大将の沖田先輩の出番になった。
あの金髪の人・・・えっと風間君だっけ?
二人とも構えて向き合って・・・傍から見ていても隙が無くて・・・
他校の生徒も先生達も、みんな静かに試合の行方を見守ってる。
タンッ
タタンッ
竹刀が交わる音と、合わせて聞こえる二人の掛け声に、会場内が吸い込まれてた。
やがて…
・・・--------パァン
と、竹刀の音が響いて、同時に聞き慣れた通る掛け声も聞こえた。
その瞬間、
わあああ、と会場から歓声が上がった。
表彰式の後、沖田先輩のまわりには他校の生徒や先生達が集まっていて、なかなか近づくことが出来ない。
取材中、と書かれた腕章を付けてる人達も、沖田先輩に話しかけてる。
わぁ・・・やっぱり沖田先輩ってすごいんだなぁ。
他の先輩達も永倉先生も、他校の人に捕まっていて、私はなんだか居場所がなかった。
さっきまでいたお姉ちゃんも見当たらない。
しかたなく会場の壁によりかかって、沖田先輩が戻ってくるのを待った。