第9章 西の鬼と東の大将
「沖田、必ず決勝まで上がって来るんだな。」
突然背後から低い声がして、皆で一斉に振り返ると、関東大会で見たあのヤンキー・・・ではない金髪の人が立っていた。
「ああ、風間君。君こそ途中で敗退しないでよ?」
沖田先輩は楽しそうにそう返す。
風間君って人の登場で、なんだか先生達もふくめてぴりぴりした空気になった。
「あっ!風間君!」
そんな空気をやぶって、お手洗いに行ってたお姉ちゃんが戻ってきた。
え?知り合い?
多分そこにいた人達全員そう思ったんじゃないかな?
「・・・ああ。額に傷は残ってないか?」
「額に傷?ああ!残るわけないじゃん!ぜーんぜんだよ?」
と、さっきまで張り詰めた空気を纏っていたはずのこの風間君はお姉ちゃんの近くまでつかつかと歩いてくと、お姉ちゃんは前髪をあげておでこを見せてる。
そして、お姉ちゃんのおでこを指でなぞってる風間君の姿になんだか恥ずかしくなった。
はっ、と殺気を感じて横を見ると、原田先生がめずらしく眉間に皺を寄せてる。
そんなことも露知らず、お姉ちゃんと風間君はなにやら話をしていて、大丈夫かな?なんて思っていると、それに気がついた沖田先輩はなんだか楽しそう。
「おい風間!」
「風間、探しましたよ。」
関東大会の時に風間君と一緒にいた二人がバタバタと走って来て、
「今日こそ貴様には俺が勝つ。それまで負けるなよ。」
そう言って風間君は去っていった。
「彼は西の鬼と呼ばれてる風間君だよ。去年のこの大会は彼が征したんだ。追いかけて来た二人もかなり強いよ。」
井上先生が穏やかに言うと、みんなの緊張感が増すのがわかった。
「ま、僕が勝つけどね。」
沖田先輩はすごく楽しそう。
そうだよね。
強い相手が沢山いるんだもん。
やっぱりかっこいいな。
「風間ってやつも俺が倒すぜ!」
平助先輩には悪いけど…沖田先輩の試合が見たいです。
なんて思っていたら、
「夢主(妹)、見てろよ!」
って、平助先輩がニカッと笑うものだから、思わずお茶をむせてしまった。
「あはは夢主(妹)ちゃん、今僕の試合が見たいって思ってたんじゃない?」
むせてる私の背中をさすりながら、沖田先輩はこっそり図星な事を言う。
あははと笑う沖田先輩の横顔をのぞけば、やっぱりかっこよくて、ドキドキが止まらなかった。