第9章 西の鬼と東の大将
今にも手をつなぎそうな二人の背中を追いかけて歩いていると、私達が泊まるホテルに着いた。
「じゃあ明日は、駅で待ち合わせな。おやすみ。」
ホテルの前で原田先生はそう言って去っていく。
「気をつけてね〜」
去っていく背中に、お姉ちゃんが声をかければ、返事代わりにひらひらと片手をあげてる。
「原田先生優しいね。お姉ちゃんよかったね。」
背中を見送るお姉ちゃんは、なんだかちょっと寂しそうだけど、やっぱり心が繋がってるのが羨ましい。
早起きして、待ち合わせの場所まで行けば、沖田先輩達はもう集まっていた。
部員だけど…呼ばれてないのに勢いで来てしまった事を今更「来てよかったかな…」なんて思ってしまう。
「おはようございます!!私も見学させてください!!」
怯んでしまいそうな心を押しのけて大きな声で挨拶をすれば、
「あははは。夢主(妹)ちゃん、元気だね。まさかここまで来ちゃうなんて、嬉しいな。」
いつも通りな沖田先輩がいた。
「夢主(妹)ちゃん、スコア係してよ。それだったら中に入れるし。」
制服で来てよかったぁ…。
再び大きな返事を返す。
「夢主(妹)見てろよ!俺が全員倒してやるぜ!」
平助先輩はりきってるなぁ。
いいなぁ。なんだか羨ましい。
この大会は5人編成の団体戦で、勝ち抜き戦。
平助先輩が勝ち抜いたら、大将である沖田先輩には出番が回って来ない…ってことだよね?
沖田先輩まで回るといいな…
なんて、張り切ってる平助先輩には絶対に言えないことをこっそり思った。
「夢主(妹)ちゃん?平助なんて見てないで、ちゃんと僕を見ててね?」
平助先輩をぼーっと見ながら、心内に失礼な事を思っていた私の頭をぽんぽんとたたく沖田先輩に、恒例のドキドキが始まった。
「沖田先輩がんばってください!」
真っ赤になってると思うけど、それを隠してそう言えば、
「あははは。夢主(妹)ちゃん真っ赤だね。僕は誰にも負けないよ。」
と、沖田先輩の掌が再び私の頭の上にぽんぽんと優しく落ちて来る。
とっても不純な考えだけど、無理矢理頼み込んでここまで来てよかった。
これからの試合もすごく楽しみだけど…沖田先輩と過ごせる時間がとっても嬉しい。
私の突然の我儘を聞いてくれた皆に感謝だ!そう思いながら、会場までの道程を歩いた。