第2章 サクラ散る頃
やっぱり悪い予感はあたってしまう。
気がついちゃった。
きっと…一君よりも…あの子よりも早く。
どうしたらいい?
ねぇ一君…
私のことまだ好き?
それは高校に入ったばかりの頃。
ありきたりな出会い方。
私は定期を落とした。それを拾ってくれたのが、中学生だった一君。
無愛想で真面目そうで。ありがとうって笑いかけたら赤くなったの。
それがかわいくって、また会いたくなったのだけど、なかなか会えなくて、とうとう駅で待ち伏せなんてしてみて…
そしたら、駅前にある本屋さんから出てくる一君をみつけて…
偶然を装って話し掛けた。
そしたらまた赤くなって…
「苗字さん…ですよね。また会えるとは思っていませんでした。俺も同じ高校を受験します。……って何を言ってるんだ俺は………」
真っ赤になって話す彼。低くて優しい声色。
「名前、覚えててくれたんだ…うれしいな。同じ高校に通えたらいいなぁ。」
そう言えば少しうれしそうで…
「すみません。名前…定期を勝手に見てしまいました。」
「ううん、拾ったら中身見るのは当たり前だもの。それに…名前覚えててくれたのがすごくうれしい。あのね…」
言うか迷ったけど…
「あのね…またあなたに会いたいって思ってたの。だから…ごめんなさい。この駅なら会えると思って…待ってたの…」
さすがにうざいかな?…そう思って上目遣いで様子を伺う。
そしたら彼は、
「……斎藤一です。俺も会いたいと思っていました。」
無愛想なのにどこか優しくて、私の目をきちんと見ていて…
そのまま吸い込まれそうになった。
そこからLINEをするようになって…なかなか会うことはなかったけど、毎日LINEして、受験勉強の合間に電話をくれたりして…
冬休みに入ったから…と、久しぶりに会って。
会ったらすごくドキドキして、年下でまだ中学生なのに…たくましく見えてしまって…
そっと私から手を繋いだの。
また赤くなるかなって様子を伺えば…
ぎゅって手を握り返してきて、さらにドキドキが増したなぁ…
――ねえ一君。まだこんなにあの時のドキドキを思い出せるんだよ、私。
でも知ってるの。
私達は合わない。
きっと…性格も…リズムも…全部。
変なの。こんなに大好きなのに。
あなたが無理をしてることくらい、私は知ってるんだから。